絵を描くとき、多くの人は「どんなテーマにしよう?」と考えるものだ。しかし、フルフォード素馨(ジャスミン)は少し違う。
彼女は日常の出来事やふと心に浮かんだこと、さらには眠っているときに見る夢までも作品のヒントにしている。特定のテーマに縛られることなく、自由気ままに制作を進めるのが彼女のスタイルである。
フルフォード素馨にとって、作品制作は未知なる世界への探検だ。
綿密な計画を立てるわけでもなく、「おっ、これ面白い!」と感じた瞬間を大切にしている。例えば、道ばたで見つけた変わった形の石や、友達との何気ない会話、テレビで流れたニュースさえも、彼女にとっては立派なインスピレーションの宝庫だ。
まるで、日常の中に隠れた宝物を見つける冒険家のようである。
彼女の作品には、「信じるって何だろう?」という問いが隠されている。しかし、これは難しい哲学の話ではない。
フルフォード素馨は、「絶対に正しいことなんて、もしかしたら存在しないかもしれない。でも、自分が感じたことは信じてみよう」と考えている。
例えば、友達が「このお菓子、美味しいよ!」と言っても、自分が食べてみて「うーん、そうでもないな」と思うことがあるだろう。
それでもいいのだ。自分の感じたことを信じることが大切であり、それが彼女の作品づくりにもつながっている。
フルフォード素馨の作品は、見る人によっていろいろな解釈ができるのが特徴だ。
彼女は「みんなが同じように感じる必要はない」と考えており、作品の見方に正解も不正解もない。
例えば、ある絵を見て「これは海だ!」と思う人もいれば、「いや、これは宇宙だ!」と感じる人もいるかもしれない。でも、どちらも正しいのだ。自分なりに考え、自由に感じることこそが、彼女の作品を楽しむコツである。
フルフォード素馨の作品の中には、少し不思議で考えさせられるものもある。その一つが「トランプの逮捕」という絵だ。
この作品は、ドナルド・トランプが大統領に就任する前に描かれたもので、見る人によってはまるでトランプが銃で撃たれ、警官たちに取り囲まれているように見える。
もちろん、実際にそんな事件が起きたわけではない。
しかし、この絵を見た人が「もしかして、本当にあった事件なのでは?」と思ってしまうのは、人の記憶や認識がとても曖昧で、不思議なものだからだ。
フルフォード素馨は、そんな人間の思い込みや、情報がどのように頭の中で再構築されるのかを描いているのだ。
さらに興味深いのは、この作品が実際に起きた銃撃事件を連想させる点である。まるで将来の出来事を予言したかのように見えるが、実際にはそうした意図は一切なかった。
フルフォード素馨は、単に感覚的にインスピレーションを得て描いただけであり、未来を予測しようと考えたわけではないのだ。
それでも、作品には偶然の一致による驚きが隠されており、鑑賞者をはっとさせる力を持っている。
フルフォード素馨の作品は、まるで自由な風のように、決まった形やルールに縛られることなく、自分の感じたままを表現している。
何かを作るとき、「こうしなきゃいけない」と思わずに、自分の心の声に耳を傾けること。
それが、他にはない、キラリと光る作品を生み出す力になるのだ。
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フルフォード素馨Jasmine Fulford |
「Plastics」
2025年2月21日(金) ~ 3月11日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日2月21日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:2月21日(金)18:00-20:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatのギャラリーにて、現代アーティスト手島領、南村杞憂、フルフォード素馨による3人展「Plastics」を開催いたします。「Plastics」では、表面的な印象や偽りの中に潜む本質を提示した3名のアーティストによる作品を展示いたします。